春がきても春はこず。
この何カ月、とてもとても長かった。
どしゃ降りの六本木を散歩していたら、突然、雲の隙間から陽の光が射して、さっきまで強風と大雨に耐えていた街路樹や雑草が青々と輝き、そのとき初めて、あぁもう春なんだ、と涙がこぼれそうになった。
暗く重い日々の支えとなってくれたのは、部分的にあることを打ち明けた人たちのやさしさだった。
そして、不思議だなあとおもったのは、なにも言っていないし、そのことを匂わせようともしていないのに、わたしの寂しさに触れて寄り添ってくれる人がいたこと。
とても鋭い観察眼を持っている方なのか、波長がぴったりで呼応したのか。
たぶん後者。だけど、前者でもある。
移動するための荷物があまりにも大きすぎて、ほかの人は「何が入ってるの?」「なんでそんなに持ってきたの?」と聞いてくるけど、大きいものを持っているってだけで「一度置いてこっちにおいでよ!」と声をかけてくれた。
そんな感じに近いかもしれない。
やわらかくて、ちょっと冷たくて、うしろには熱くまぶしい光をしたがえている。
今日の雨のようなやさしい人と巡り会えた私は、きっと今がプラスマイナスゼロで、幸せな方へとゆるやかに歩き始めているんだとおもう。